オオギリ・レーダー

僕が聞きたい人に聞きたいことを聞いてログを載せるブログです。

INTERVIEW #10 スズケン さん 前編

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名前 スズケン
大喜利暦 2011年~
所属団体(活動場所)  解の会、すり身会 など
主な実績  第一回崩解生 優勝、第6回 鴨川杯優勝、生大喜利ナイト優勝
生まれ年 1972年
住んでる都道府県 大阪府
Twitter  @suzukenabubee
ブログ スズケン&YOKOTOのフライデーナイツ

 

 

スズケンさんが大喜利をする理由を
始めた当初→現在 の数値を5段階評価にして教えてもらいます

項目は以下の5つです

大喜利が大好き

・自分の発想を表現する手段として適している

・面白い人に会いたい

・一番になりたい、他人と勝負して勝ちたい

・あなただけの理由

 

あのころ: オオギリレーダーです。ホストのあのころです。次が10人目のお相手になります。お越しいただいたのはスズケンさんです。 

スズケン: こんばんわ。よろしくお願いします。
あのころ: そんなここ(レコーダー)見なくても大丈夫ですよ(笑)普通に喋ってたら入るんで(笑)
スズケン: いや、どこも見るとこないんで(笑)いやいやもう、よろしくお願いします。
あのころ: 記念すべき10人目のお相手ということで。前回が冬の鬼さんのインタビューで。
スズケン: フハハ、それいきなり言うんですか(笑)
あのころ: なんか評判が良くて、正直お褒めの言葉しか目にしてないですけどね(笑)
スズケン: いや、だからそれはもう冬の鬼さんのは良かったと。
あのころ: ハードル上がってますけどね(笑)
スズケン: なんかあるんですか!冬の鬼さんと僕はなんかあるんですか!(笑)
あのころ: いやだって「冬の鬼に勝った男」ですから。スズケンさんは(笑)そこは当然ね?
スズケン: いやあのね、冬の鬼さんね、いい人なんですよ!
あのころ: そうですね。
スズケン: あの第6回鴨川杯、勝たせていただいた後にね、お会いする機会があって。
あのころ: はい。
スズケン: その関西で「冬の鬼さんがスゴイ」となってる時にお会いして、本人の目の前ですよ? 俺はもう年齢も年齢なんで、「”俺は冬の鬼に勝った男だ”と言っていいですか?言わしてもらいたいんですが」と言って。
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: そしたら冬の鬼さんが「ぜひ言ってください」って。なんかこっちが申し訳なくなるくらい「ぜひ言って」って。
あのころ: まあまあまあ、観てた人が実質どちらの勝ちだと思ってるかは別にしてね(笑)
スズケン: あーやめやめやめ、そうなったらホンマもうやめや!
あのころ: 「あいつキャラ勝ちしただけだ」って思われてるというのは別にしてね(笑)
スズケン: キャラ勝ちじゃないでしょう(笑)言うなぁー、ホスト言うなぁー。
あのころ: まあ大会としてはそういう結果になったということで、まあ勢いがあったというね。
スズケン: あのね、第6回鴨川杯のDVDをね、お金を出して買ったんですよ。
あのころ: どうですか、冷静になって見返してみて。
スズケン: 準決勝でのあの人の姿を見た時に「こんなモンスターと戦えるわけがない」って思ったんですけど。 DVDが編集で僕が勝ってないことになってなくて良かった、ってい(笑) あれもう俺5枚くらい買おかなって。実は俺に渡した1枚だけ俺が勝ってて、あとは全部冬の鬼さんが勝ってるんちゃうかって。
あのころ: いやいやいや、もう完全勝利ですから(笑)。
スズケン: ケンがあるわ、ケンが。いややな(笑)そんなフリから入るんですか(笑)
あのころ: じゃあ一つ目の項目から行きますね(笑)
スズケン: はい。
あのころ: 大喜利が大好き』 過去 2→現在5
スズケン: はい。
あのころ: スズケンさんの大喜利との出会い、というのは?
スズケン: 僕年齢が年齢なんでね、大喜利という物自体に出会ってるのはもうだいぶ古いと思いますね。 もともとガキの頃から視聴者投稿型のテレビ番組とかで…
あのころ: その当時の番組というと?
スズケン: これはもうわかる人しかわからないと思うけど、欽ちゃんの『欽ドン!』ですよ。
あのころ: あっもうすごい古い…
スズケン: もうね、『内村プロデュース』とかじゃないですよ。
あのころ: あぁ、前回の冬の鬼さんは内村プロデュースだったけど。 これ最古じゃないですかね、いままで聞いた中で大喜利との出会いの最古。 そうでしたね、ハガキを読む形式でしたね。 送られてきたのを良い子悪い子普通の子がコント仕立てで紹介するっていう。三段落ちでね。
スズケン: そうそう、一応関わったのはそこからですかね。
あのころ: その時で、何歳くらいだったんですか?
スズケン: えーっとね、10歳。
あのころ: (笑)めちゃめちゃ古いですね。多分大喜利という言葉で認識もしていない頃からですね。 その当時で採用された経験というのは?
スズケン: 無いです無いです。いやもうだってガキの考えることなんて「プゥー」言うたらおもろいくらいのもんで。 そこからずーと最近まで「プゥー」がおもろいと思ってきましたから。ダメな人間なんで。 でまあ全然採用はないんですけど、そこからいろいろラジオに出したり。 それで、高校生の時に出会った『ヤングタウン』というラジオで初めて採用されて。
あのころ: その当時のパーソナリティというと…
スズケン: えーっとダウンタウン、嘉門達夫、笑福亭鶴瓶さんにさんまさんとかまあ黄金時代ですわ。
あのころ: あぁ、もうお笑いは大好きだったんですね。
スズケン: いやお笑いはもうめっちゃ好きでした。ただ人前でやるのはちょっと恥ずかしいかなっていう。
あのころ: でも学校ではしゃいで、ちょけて、みたいなタイプに見えますけどね。
スズケン: いやまあそれはしてたのはしてた。でも学生時代の話はあんま面白く無いですもん。 普通の楽しい学生生活でした。
あのころ: 人気者的なポジションではなかったんですか?
スズケン: いやー僕が言うたらみんなついてきてくれる、という感じでは…。 だから僕今だに嫌いですもん、高校生の時のアイツ。
あのころ: (笑)そうなんですね。
スズケン: あんなん面白く無いんです。大嫌いです、ホンマに嫌です。 前の日の(TVで)やってたネタを学校でやらされるという。
あのころ: (笑)「お前それTVから持ってきただけじゃん」ってやつではしゃいで。
スズケン: それをね、求めるやつがいるんですよ。 『志村けんのだいじょうぶだぁ』とかの、面白かったやつを「やってぇや~」とか。 そんなんをやらされる、普通のしょうもない高校生でした。
あのころ: 自分でオリジナルを出して、という感じではなかったんですね。
スズケン: 無いです無いです。だから何の財産もないまま高校を卒業して。でももう僕高校生がピークなんで。
あのころ: あははははは(笑)人生の?
スズケン: はい。大学に行きたかったんですけど、学力と家庭の事情もあって、無理やって。 ちょうどNSCが有名になりかけてた頃の時に、その時仲の良かった友達と「一緒にNSC入ろう」と、 願書まで取り寄せて誘ったんですけど、当時ダウンタウンが東京に行ってグワーって来てる時で。 友達が一言「お前、俺らがダウンタウン超えれると思うか?」と。
あのころ: 質が違うと(笑)
スズケン: その一言で、「あ、そうかなー」と。そいつは今公務員ですよ。
あのころ: 優秀な人ですね。めちゃめちゃしっかり見れてる人だ。
スズケン: もうね、バブル経済盛んな頃に公務員になるって。人生設計ができてる。
あのころ: 先見の明がありましたね(笑)その時は「なんでやねん」って思ったかもしれないけど。
スズケン: 世間ではもうトヨタや日産やと、高卒でも入れた時代ですよ。いろんな奴がいろんないいとこ行ってて。 僕らの世代は団塊の世代が産んだ第二次ベビーブームの時なんで。大学が普通のしょうもない学校でも倍率が40倍とか。
あのころ: ああー。めちゃめちゃ多かったんですね。
スズケン: もう入れるわけがないと、でNSCにも行けない。そこからですよ、僕の不遇の人生が始まる。
あのころ: あははははは(笑)でもお笑いへの情熱みたいなのはずっとあるんですね。
スズケン: ずっとある。ずっと「俺は面白い」と。
あのころ: 「ここでこんなことをやっている人間ではない」と。
スズケン: 「日さえ当たれば」「陽の目を見さえすれば」というクソみたいな考えをずっとしてたんです。 で、人並みに働いて、親の跡継いでるんで敷かれたレールの上で生活してて人並みに結婚もして。
あのころ: でも不幸ではないですよね?
スズケン: 不幸ではなかったです。ただでもね、突然いろんな不幸が来るんですよやっぱり。
あのころ: 不幸が
スズケン: これは別に「作る」とか「盛り上げなあかん」とかは一切無くて、 「ありのままにしゃべる」って言ってたんでありのままに言いますが…
あのころ: はい(笑)
スズケン: えーっと35近くまで、クソでした。
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: 今考えると、もったいない人生を歩んでました。何にもしてないですから。
あのころ: でも仕事はちゃんとしてたんですよね?
スズケン: 仕事はまあしてたんですけど、景気が悪くなってきたりだとか、 仕事や夫婦生活もいろいろ重なってウワーって、頭が割れそうになった時があったんです。
あのころ: 楽しくなかったんですか。
スズケン: なんにも楽しくなかったです。僕友達が好きで、いろんな人が好きで。 一緒に遊んでたりするんですけど、でもだんだん人が減ってくるじゃないですか、30代になると。
あのころ: そうですね、結婚して、家の用事とかでそんなに自由に時間をとれなくなって「ゴメン、ちょっといけないわ…」とか。
スズケン: そうなんですよ。周りに遊んでくれる人がいなくなって。でうちは子供もいないんで、 同じ境遇の友達が一人だけいたんですけど。YOKOTOっていう。 今一緒にラジオもやってる同級生がいて、そいつだけ残ったんですよ。
あのころ: はい。
スズケン: そいつは僕と全く一緒で、「俺はここでくすぶってる人間じゃない」っていう。 「でも何が出来るというわけでもない」と。モヤモヤするものだけがあって。
あのころ: それを発散したいけどもする場がないと。
スズケン: そうなんですよ。で、何があるんかって調べたら、『R-1ぐらんぷり』があったんですよ。2009年です。 で、もうとにかく藁をもつかむ思いじゃないですけど、 「M-1に出たいけど相方がおらんから」とか、何もできないくせに言うてる自分にすごく腹立たしくて。 それが3年4年って続いていて、私生活もホンマに思い出したくもないくらい毎日がおもんないし、嫁ともケンカもするし。 で「ちょっと一回やってみるわ」と。それでどんな反応すんのかなと思ったら「ええやん、やってみいや」って。 3000人4000人おる中の2700番くらいやったかな?当然一回戦で負けて。
あのころ: そうですよね、そんな簡単なものじゃないですよね。
スズケン: ネタ飛んだとかでもないんですけど、ここで笑うやろみたいなとこがもう…。 初めてですから、ネタなんか作ったの。一本コント書いて。それが「うわー全然ウケへんわー」ってなって。
あのころ: 素人だしね。
スズケン: そうですよ。お客さんも「お前なんか見に来てへんわ」って感じで。 芸人さんとかも舞台袖に帰ってきた時「何やねん今日の客」って言ってるくらい重たい空気の中で。で、負けて、その次の2010年もね。
あのころ: すごい。くじけなかったんですね。
スズケン: そこでくじけたら俺の人生終わりや思ってたんですよ。ホンマに。
あのころ: あはははは(笑)そこまで?
スズケン: そこでR-1に2回出て2回とも一回戦で負けた後に、YOKOTOと二人で「ラジオやろうや」と。 誰が聴いてるかわからんけど、ラジオを勝手に放送できるサイトがあると。
あのころ: 素人のネットラジオが流行った時期がありましたね。
スズケン: 流行ってたみたいですね、後で聞いたら結構いろんな人がやってて。 話が逸れるんですけど、僕ね、生大喜利始めてからいろんな人にいろんなこと教えられて、いっぱい恥かいてる(笑)
あのころ: 情報があまり入ってなかったんですね(笑)
スズケン: 実際にこうやってあのころさんに直接会って録ってもらってることからもわかると思うんですけど、 僕は文明社会から置いて行かれてるようなんで。
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: 今だにネットを使えない、回線を家に引いてないですから。
あのころ: そうですね。今これ録音でインタビューしてるんですけども、 それがなんでかって言うとスズケンさんにはSkypeチャットがちょっと難しいだろうなっていう判断で。
スズケン: 俺いろんな人に気を使いながら返事するんで、返すのにすごく時間がかかりそうで。
あのころ: Skpeだとスズケンの良さが出ないよなーっていうのがあったんで、ここはもう泣く泣くね。
スズケン: ありがとうございます。もう本当にありがとうございます。
あのころ: いえいえいえ(笑)
スズケン: でラジオを録ったら当然「お前ら誰やねん」となって。
あのころ: あはははは(笑)あのね、ハードル高いですよ、ラジオ聴いてもらうっていうのは。
スズケン: そうでしょう?だって俺でも聴きませんもん。「お前誰やねん」っていうラジオ。
あのころ: 知ってる人でも難しいですよ、ラジオ聴いてもらうの。
スズケン: それを相方のYOKOTOがめっちゃ怒ってね。「俺らがやってんねんぞー!」って。
あのころ: あはははは(笑)知らないよ(笑)
スズケン: ラジオってカウンターとかあるんですよね、聴いてる人数の出る。1って出るんですよ。 1コ下の親戚の女の子が俺のこと好きで。その子だけが聴いてるっていう。 で、その一人しか聴いてないんじゃこれはもうやってられへんと。 YOKOTOさんは、やったらすぐに100万人くらい集まると思ってて。 彼はアマチュアですけど音楽やってるんで、僕がR-1出た時に自分も新曲とかをYoutubeにアップしてて。 とはいってもそんなの誰も聴いてるわけ無いじゃないですか。再生数ゼロじゃないですか。それもまた怒るんですよ。 でもそれはもうしょうがないじゃないですか。誰も知らないから(笑) でそんなやりとりを何度もしてて大ゲンカしたのと、ラジオのサイトがサービスを停止するってなったのを機に、 ラジオを10回でやめたんですけど。
あのころ: はい(笑)。
スズケン: でまた次やるんですけど「リスナー集めなあかんやろ」ってなって、YOKOTOに「お前mixiやれ」って言われて。
あのころ: 出来立ての頃ですかね。
スズケン: いやいや、もう完全に下火の時ですよ。
あのころ: あはははは(笑)もうみんなやめてTwitterに移り始めてた頃だ。
スズケン: そうですそうです。まだmixiに広告がつかなかったギリギリの頃です。で、僕そこで本格的な大喜利と出会うんです。
あのころ: コミュニティで。
スズケン: そうです。そんでもう「マイミクを増やせ」と、「そしたらリスナーが増える」と。
あのころ: そうか、宣伝の目的だったんですね。
スズケン: ただ、どんなイメージ持たれてるかわからないですけど、僕文章書くのがとにかく苦手なんです。 でもなんかYOKOTOさんはやたらめったら知らんやつにでもメッセージを送って「マイミクになってください」って。 そんなの今から考えたら気持ち悪いやつですよね。
あのころ: ブロックするタイプですよね。知らないのにね。
スズケン: だから僕はじめの頃は全然知らん業者の女の子とかがマイミクでしたよ。
あのころ: もうなりふりかまってられなかったんだ(笑)
スズケン: マイミク増やさないと怒られるんでね。でもやっててこれは間違いなく違うと。やたら「会おう」とか言われるんで。 で、俺はYOKOTOに「申し訳ないけど俺のやり方でマイミクを増やしていく」と、いろんな方法があるから。 だから「一年二年かかるかわからんけども、ちょっと待ってくれ」と。 そしたら「そんなのアカン。3日でやれ」って。
あのころ: 厳しいですね(笑)上下関係があるんですね(笑)
スズケン: あるんですあるんです。ネットに関してはめっちゃ厳しいんです。「なんでお前はメッセージを送れへんねん」って。 マイミク一人増えるとすごく褒められるんですよ。
あのころ: ああーちょっと痛いですねYOKOTOさん(笑)
スズケン: 痛いでしょ!?で、そこでmixiの大喜利のコミュニティをいろいろ見てて、 みなさんご存知の『お笑い頭脳バトル』に当たったんですよ。 あそこは二部制になってて、審査してもらって、確か8個選んでもらえたら一部に上がれるんですよね。 で「すぐに上に上がるから待っててくれ」と、上がったら自然と「あ、この人は」ってなってマイミクが増えるはずだからと。 なんとかそこでマイミクを増やそうと頑張ってたんですけど。 でももちろん票が入らないんですよね。
あのころ: 厳しいですよね。
スズケン: 結局1年半、2年近くかかって一部に上がって。
あのころ: あー、3日じゃ無理でしたね(笑)
スズケン: ただそのあたりからちょっと変わりましたけどね。大げさかしらんけど人生が明るくなったというか。
あのころ: 一週間の中で必ずやらなきゃいけないことのサイクルが出来た。
スズケン: そうなんです。月曜日に結果が出るでしょ? で選ばれてなければ「ゼロかー」って、で一票選ばれてる時なんかはもうその週は「俺一票選ばれたわー」って気持ちで。
あのころ: それを続けられるモチベーションというのは何なんですか?結果が出ないとくじけそうにならないですか?
スズケン: そこはもう面白いって思われたいってことなんかなぁ。 すぐに止めることになるのかな、と思いながらもやってたんですけど。 でもなんかね、楽しかったというのと、止めれないっていう義務感が凄かったです。 ここを逃げてしまうと、完全に終わってしまうという。
あのころ: 自分は面白く無いと認めてしまう、というか。
スズケン: うん、「俺はここで終わりの人間なんや」って。 で、ちょうどそこで僕mixiの方で『崩解』を見つけて、リアルタイムでネット上で出来る大喜利を。 「こんなんあるんや!」ってなって。
あのころ: もうその時点でけっこういい歳ですよね?
スズケン: そうですよ、もう38、9ですよ。
あのころ: すごいですね(笑)若い子と混じって。
スズケン: 「ああ、こんな世界があるんやー」って、それであのへんをたどって行って、『解の会』と出会うんです。
あのころ: その時はまだ大喜利での評価を得ている状態では無かったんですか?
スズケン: 無いです無いです。ただ大喜利で面白くなりたいという一心で。
あのころ: 自分は面白く無いって認識だったんですか?それとも…
スズケン: ああ、違う。面白く無いというのは違うな。上手く言われへんけど…「俺はネットじゃないわ」って。
あのころ: あはははは(笑)ネットのやり方には合わないと。
スズケン: だってネットは表情が出ないから。
あのころ: そうですね。キャラクターは出ないですね。
スズケン: これはあくまで最初の頃の話ですからね、そんなん今もそう思ってたらアホですけど。 自分はやっぱり板の上に立ちたいと。
あのころ: ネットでは俺の良さは出ないと。
スズケン: ってぐらいに思ってたら、「生でやるところがあるんや」って。 その時に始めて生大喜利に出会ったんですよ。 それでその解の会に行った時に、もちろんその時のメンツとか今でもハッキリ覚えてますけど そこで僕の人生が変わりましたから。解の会に行って変わりました、はい。 まあ生大喜利に行ったら、「こいつはおもろい」「すげえなー」って言われるやろなぁって。
あのころ: 生大喜利なら直で反応が見れますもんね。
スズケン: 今からでもまだまだ間に合うわくらいの感じで行ったんですけど。
あのころ: どうだったんですか(笑)
スズケン: えーと喋ってたの最初の30分だけでした。
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: 大喜利が始まった時はもうニッコニコしてたんですけど。 わけのわからんオッサンが急に出てきてね、言って見れば結構みんな知り合い同士の人が多くて。 またその時の解の会はやたら人数が多かったんですよ。カラオケボックス2部屋に別れないといけないくらい。 何題かやったらローテーションで部屋を変わろうっていう感じで。 で、一部屋目の時はもう元気いっぱいで。周りがみんな年下だって事はわかってましたけど、失礼のないように気をつけながら。 で何個も答えを出していくうちに何か違うことがわかるんですよ。俺何やってんねやと。
あのころ: あはははは(笑)思ってた感じと違ったんだ。
スズケン: 全ッ然違うんですよ。全くウケない。俺が喋ったらそれまでめっちゃ笑ってたのにシーンとなる。 ああもう思い出したくもないです、あの空気。
あのころ: 一回それ体験しちゃうとねー。
スズケン: いやでも、まだわからん、って次の部屋に行ってまた全然知らん人とやった時に「あ、俺違うんや」と。 二部屋目でわかりました。でもう回答が出せなくなったんです。
あのころ: それはどう思ったんですか。「こいつらとは合わない」という風に思ったんですか?
スズケン: いや違います違います。あの時はホンマに正直に言うと、 学校行って「奴らと一緒にやれない俺は才能がないんだ」って悟って辞めていく人と同じ心境ですよ。
あのころ: (笑)面白かったんですねみんな。
スズケン: すっごい面白かったです。ちゃんとやってはるんです、まあ当たり前ですけど。 なんかちょけた感じでもなくて、特に解の会なんで。
あのころ: きっちりしてますもんね。じっくり腰を据えた大喜利ですよね。
スズケン: それが良かったかもしれないです、今となっては。 「お題があって、回答がある」ってハッピーターンがいつも言ってるあれです。 僕なんかおもろいこと言うたらええんやろーって、まだ「プゥー」がおもろいと思ってる頃ですから。 これはもうとんでもないとこ来たぞと。この人らすごいなーって。 だから最後はもうずーっと黙って見てました。
あのころ: なるほど、勉強だと思って。
スズケン: だから俺が回答出したら他の回答出す人が一回減るから失礼やと思って。もう全然出せなかったです、ホンマに。
あのころ: 実はスズケンさんとのこのような大喜利に関するインタビューは、以前10人位カラオケボックスに集まった時に一度やってるんですけど。 その時に僕がよく覚えてるスズケンさんの印象的な話しがあるんですが。
スズケン: はい。
あのころ: スズケンさんがその解の会に最初に行った時に、みんなに対して思ってたのが「俺R-1出たことあるんだぞ」と(笑)
スズケン: そうですそうです。それがやっぱりアドバンテージになると思ってるから。 でポカーンとなったんですみんな。「普通やん」て。
あのころ: あはははは(笑)「一回戦落ちなんでしょどうせ」って言われたんですよね(笑)
スズケン: ホンマ僕環境悪くて、周りにお笑いやってる奴なんて一人もいなくて。
あのころ: 普通ですよそれが(笑)
スズケン: だからね、解の会行った時にいろんなことが全部崩れていったんです。 ホンマに僕嫌われてもいいから言いますけど、自分が一番面白いと思って行ってますから。 一番面白いと思って行った奴が、一番おもんなくて。
あのころ: 何の収穫もなくて(笑)
スズケン: いや楽しかったんですよでも。やってて負けたけど。 もう実際あの時いてはった人になんて思われたかわからへんけど、楽しかったのは楽しかったんですよ。 なんか面白いことをしようとしてる自分っていうのが。 その時に、解の会の運営の店長さんに、『カワシモ杯』という大会があるっていうのも教えて頂いて。 生大喜利の大会があんねやって。それはいっぺん見たい、っていうのでカワシモ杯の見学を申し込んで。
あのころ: あ、参加ではないんだ。
スズケン: 間に合わなかったんです、エントリーに。でもまあ参加しなくてよかったですよ。すごい大会だったんですよ。 概念覆す君とか、面白い人がいっぱいいて、これはレベルがすごいと。 ただ、これは出てみたいなーってなって。ここでまた安直な考えになるんですけどね。
あのころ: でも自信は打ち砕かれてる状態ですよね?
スズケン: 打ち砕かれてますよ。でも大会があるんやったらそこに向けてちょっと頑張ってみたいって。 で大会どっか無いかなーって探したら、今は東京に行ってしまったんですけど転脳児杯。 その第9回の最後の予選会がなんば白鯨であったんです。でね、ああ俺はもう大喜利向いてないのかもしれん、って。
あのころ: あっそうだったんですか!打ち砕かれすぎて(笑) 多分、その後に出来る出来無いを分ける経験として「思いっきり滑れたか」というのがあると思うんですよ。 何も出せなくて終わったのか、思いっきりやるだけやって終われたのかで違うと思うんですけど。
スズケン: 負けるべくして負けたというか、そこは普通に負けたんですけど。 でもね、その後打ち上げに行ってね、関西の方はよくご存知だと思うんですけど『大漁』で。
あのころ: 関西大喜利界の聖地ですね。
スズケン: 食いもん美味い、飲むもん美味い、それで大喜利も出来るって最高の場所があって。 お店の店長さんも大喜利をやらはる人で。 その転脳児杯の打ち上げに「行こう」って初めて連れて行って頂いて。
あのころ: あ、嫌われてなかったんですね(笑)
スズケン: いやーどうだったんでしょうね。でもまあ座る場所はあんま無いんですよね。
あのころ: あはははは(笑)肩身が狭くなっちゃってるんだ。
スズケン: 「なんでこいつおんねん」みたいな、思ってるかどうかはわからないですけどね。 で僕ベロンベロンになって。喋る人がいてないんで飲むばっかりで。その時に人生で初めてってくらい酔いまして。 そこで盛り上がって「ちょっとみんなで大喜利やろうか」ってなった時に、初めて怖くなったんです。回答を出すのが。 それまで解の会も結構行ったし、いろんな大喜利やってたはずなのに。
あのころ: 自分がおもしろいと思ってる人から、自分のことを面白くないと思われるのが怖いんですよね。 「コイツらは~」って舐めきってたら別になんでも出来るんですけどね。
スズケン: まさにそのとおりですよ。だからその時に自我が芽生えたというか、 出してもまた盛り下がるだけやっていうのがわかったんです。 結局そこでは「今日は酔うてるからええよ」って一個も出さなかったんです。
あのころ: 昔のスズケンさんの印象がそれですよ。 大喜利が始まるまではわちゃわちゃ騒いでるのに、始まった途端に全く喋らなくなるという。
スズケン: それはそこから長いこと続きました。自分でもハッキリ覚えてます。 だからやっぱり自分でも大喜利向いてないのかなーって。 でもやっぱり大喜利からは逃げられなかったですね。
あのころ: さっきの数字に戻しますけど、だんだん大喜利が好きになっていった人なんですよね。 もう大喜利をやりたくない、ってなったりはしなかったんですね。
スズケン: 自分の実力はだんだんわかってきてはいたんですけど、 でもみんなのおる場でできへん、ってなった時にはホンマに悩んで。
あのころ: 自分の出した回答を客観的に評価できてなかったとか?
スズケン: あぁ、それもあります。何を出したいのか、何がやりたいのかがまだ全然見えてなくて。 結局、大喜利って面白いことを言うわけじゃないですか。お題に沿うってことばっかりしてて。 「なんか一昔前の大喜利みたいやなぁ」って言われたこともあります。 そんなん言われたりして、「ここがベタなんや」って気づいてくるんですよ。 そっからどうやったら人からおもしろいと思ってもらえるようになるかっていうのを考えて。 そこでウケるようになってきたら大喜利が面白くなってきました。
あのころ: 多分、最初は自分の好きな人のマネから入ると思うんですけど、どんな人のを?
スズケン: 信じられないって思われるかもしれないですけど、僕結構いろんな人のを、全員ってくらいマネしてますよ。 でも一番多く参考にしたってイメージが有るのは実はエレクトマンなんです。
あのころ: タイプは全然違いますけどね(笑)
スズケン: 「この人面白いなー」ってひとはもう何人もいますけど
あのころ: 面白いけど「マネできないなー」って人もいますもんね。
スズケン: そう、不治ゲルゲさんとかが回答を絵で描いてはったりして、でも自分は絵を描かれへんし。 いろいろ見てた中で、「エレクトマンの大喜利面白いなー」ってなって。
あのころ: 「エレクトマンならマネできそうだなー」って(笑)
スズケン: そうなると語弊があるから!でもね、あの人みたいなのをやりたいというか。
あのころ: 本当は無理なんですけどね。 だれでも真似できるようなことで大爆笑を取ってるっていうことは、本当にセンスだけでやってるってことですもんね。 それをマネするのは無理なんですけどね。
スズケン: そうですね。だから「あの人だったらこんな感じのを出すんかなー」って思っても書けなかったですもん。
あのころ: 僕も「今日はエレクトマンっぽいなー」ってスズケンさんから感じたことないです(笑)
スズケン: ただすごく勉強はさせてもらいましたよ。 舞台に立っていくうちに、慣れてくるというか余裕も出てくるけども、 初めの頃はもう答え出すので精一杯で、周りも見えてなくて。だから全員というくらいいろんな人の大喜利を参考にして。
あのころ: マジメですよね、スズケンさんは。
スズケン: めちゃめちゃマジメですよ。 島田紳助さんが漫才ブームの頃に「B&Bはここが面白い」とか分析した表を作ってたエピソードがあって。 俺も表にまではしてないですけど、大喜利の強い人でそれをやってました。
あのころ: へぇー。
スズケン: 例えば不治ゲルゲさんはワードが強いとか、絵が描けるとか。概念覆す君だったらスピードがすごいとか。 番茶が飲みたい君やったらとんでもないこと言うとか。この人はこんなや、こんなやって。
あのころ: うわーマジメだなー(笑)
スズケン: えーとあのね、時間がなかったんです。僕には。
あのころ: あはははは(笑)残された時間が、「早く陽の目を見ないと」って(笑)
スズケン: どこかに「自分はおもろい」と思ってた部分もあるし(笑) でもね、今では自分が面白いなんて思わなくなりましたよ。 周りにこれだけ面白い人がおったら、鴨川杯で優勝できたのだって奇跡としか言いようがないですよ。 ホンマにいろんな努力はしましたけども。
あのころ: いや、その成果じゃないんですか?やっぱり
スズケン: なんかね、大事に大喜利するようにはなったというか。 いろんな人のアドバイスを聞いてるうちに、
あのころ: どんなアドバイスをされました?
スズケン: 印象的だったのは、その転脳児杯であまりウケてなかった回答をスッと下げたら、 横に座ってたおかきさんが「なんでそんなすぐにしまうの?もったいない」って。 おかきさんはそこそこやった回答を更に前に出すんですよ。 「私は自分の書いた答えに自信を持っているし誇りもあるから」って。 「まだ笑ってくれる人がおるなら、すぐしまうのはもったいないし回答にも失礼や」って。
あのころ: 「回答に失礼」、すごいなー。
スズケン: そう、で俺はどんだけスベってもすぐに引っ込めないようになったんです。
あのころ: しつこく出してる時ありますもんね(笑)
スズケン: ずっと出してる時は多分そんないい回答じゃないんですよね。 自分でもそれはわかってるんですけど、そこを気持ちで負けなくなりました。 スベるのが怖くなくなったというか、自分が面白いと思って書いたものを大事にしてあげられるようになりましたね。
あのころ: 誰からだっかは忘れましたけど、スズケンさんへのアドバイスで「書いたやつを消さずに出せばいいのに」って 言われてるのを聞いたことがありますね。
スズケン: はい、それはよく言われました。自信がなかった時ですよね。 今でも迷ってる時は消すのは消すんですけど、今消してるのは語感をすごく大事にするようになったんですよ。 接続詞の「を」とか「が」とかを
あのころ: 技術的な話になってきたなー
スズケン: そうか、そんな話をするような人間じゃないんですけど。
あのころ: いやいやいや(笑)
スズケン: 「スズケンもそんなん言うようになったか」ってことね?
あのころ: いやでも本当に昔のスズケンとは違う人ですよね。別人ですもんね。
スズケン: だから「5」ですよ。今、楽しいですもん。負けても楽しい。
あのころ: 大喜利やってる中で「見ていてよかったなー」って思える瞬間があって。 地道に続けてきて化ける人がいるんですよね。ある日突然ガッと掴む人。その中の代表格だとは思いますね。
スズケン: でも、いまだに僕よりも以前からやってはった人の前で大喜利するのはちょっと緊張しますよ。
あのころ: あはははは(笑)見られてる感があるというか。 でももうだいたいどこへ行っても最年長でしょう?
スズケン: そうですそうです。上にはギャラ☆さん、さんべ商会さんしかいてないですから(笑) 重鎮ですよ、キャラの濃い二人ですよ。そこに負けたくないと思ったらへこたれてられないですよね。
あのころ: スズケンさんは年齢差とか意識して大喜利してるんですか?
スズケン: それは考えないようにはしました。 それを思ってしまうと一歩足が前に出えへんかな、ていうのがあって。 なんか面白いおっちゃんがおるなくらいに思ってもらえたらええかなって。
あのころ: 界隈を見ていると大喜利歴での同期、みたいなつながりがあるじゃないですか。 一回り以上の歳の差がついてるような若い子に、そういうふうに付き合ってもらえてるのが羨ましいなって。
スズケン: それはホンマにありがたいですよ。 冬の鬼さん、毛玉のぬしさん、晃くん、脳髄筋肉くん、あたりがほぼ同期らしいんですよ。 みんな一回り以上歳が離れてますけどね。
あのころ: ホントは「欽ドン!」からやってますけどね(笑)
スズケン: 「欽ドン!」が面白ワードになってるのなんか嬉しいな(笑) 「欽ドン!」の後に「突然ガバチョ!」もありますよ(笑)
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: そんなん知ってるような人でもまだおれる、っていう世界なのがすごくいいところやなって。
あのころ: そうですよね、ふつう共通の話題なんて無い年齢差ですからね。対等な関係になりえないですからね。
スズケン: 「これなんの集まりやねん」って、こっちが何か言わなかったら外からはわからないですからね。 こないだ九州から来てた子は18歳でしょう?こっちは42のオッサンですよ。
あのころ: それが対等な関係というか、ライバルとして見てもらえたり。 でもやっぱりスズケンさんは若いですよ。スズケンさんと同い年でそれを始められる人ってなかなかいないですもん。
スズケン: あー、ですね。だから周りからはちょっと「お前何してんねん」とか
あのころ: 「変わっちゃったなー」とか思われてるんですか?
スズケン: いやもともと面白いことが好きだったりR-1出てたりはするんで。 周りの反応は両極端ですね、「お前そろそろ落ち着け」「若いやつに混じってようやってるな」という声と、 「すごいわ」って言うてくれる人と。 「鴨川杯優勝したんや、DVDに出てんねん」って言っても、「何それ」って言う奴と「観たい」って言ってくれる人と、 全く分かれますよね。
あのころ: まあそれはそうですよね。
スズケン: でもね42歳にもなって、それまでいろいろ我慢しましたけど、 大会で優勝して泣けるくらい嬉しい思いができるってそれはもう「大喜利が好き」っていうのは「5」でしょう。 この歳になってまだまだ上を目指せる大喜利に対しては。
あのころ: こっちの人生で良かったと思います?
スズケン: 今は思います。
あのころ: そのクソみたいな生活を経て。…クソみたいな生活って何なんですかね(笑)
スズケン: 寝て起きて、メシ食うて、仕事して、パチンコ行って、ボート行って、寝て起きてっていう。 パチンコとボートしか生きがいがなかったんで。
あのころ: 今はもう全然やってないんですか?
スズケン: 余裕が出たんでやってます。
あのころ: あはははは(笑)
スズケン: いや全然楽しみ方が違いますよ(笑) 周りがびっくりしてたのが、競艇の大きいレースがあるのに行かないで大喜利に行くってなって。 大喜利の大会でもないですよ。誰かの企画の会で。 「ゴメン今日俺ボートいかれへん」って言うたら「何それ!?」って。「今日ダービーやで!?」って。
あのころ: あはははは(笑)優先順位が変わったんですね。
スズケン: 「それより楽しいことがあんの?」って。「変わったなー」とは確かに言われてるかもしれん。
あのころ: よく笑うようにはなったんじゃないですか?
スズケン: あー、そうですね、確かに。クソみたいな生活の時はもう怒ってばっかりでしたもんね。
あのころ: モヤモヤが解消されない状態で。
スズケン: もうね、何やろう。もう本当にクソみたいな毎日で。
あのころ: (笑)そんなに悪い生活じゃないような気もするんですけどね
スズケン: 一人になることほど寂しいものはないんですよね。 日曜日になると一人になるんですよ。共働きなんで奥さんが仕事に行ってしまう。休みが違うんですよ。 休みの日に一人になるのがすっごく寂しくて。仕方がないから朝からパチンコ行って。 パチンコ屋に並んでる時ほどおもんないこと無いですよ。 パチンコの情報誌見てるくらいしかできないですから。 もうだから大喜利に対しては感謝しか無いです。
あのころ: そうかー(笑)。 スズケンさんに聞いてみたいことがあったんですけど。 大喜利の大会に奥さんがいらっしゃるじゃないですか。 ぼく他にそういう人をあんまり知らないんですけど、どういう経緯で?
スズケン: それはまあ、奥さんは色々知ってるわけですよ。 クソみたいな生活の間ずっと笑ってなかったけど、大喜利を始めた後でも笑ってない時もあるんですよ、いろいろ悩んでて。 でも奥さんはずっと「ガンバレよ」ていうのは言ってくれていたんで。
あのころ: それは大喜利のことで悩んでるんですけどね(笑) 大喜利をするのは最初から奥さんに言ってたんですか?
スズケン: そうです。「今度解の会に行くねん」「わぁそれすごいやん、楽しみなんちゃうん?」って。 で大きい大会だろうが小さい集まりだろうが、もう前の日になったら寝れないんですよ。メンタル弱いんで。 そしたら横で「どしたん?寝られへんの?」って。あの言葉はありがたいですね。 大喜利始めて夫婦仲も良くなりましたからね。 初めて大会を観に来たのは第2回鴨川タッグフェスですかね。
あのころ: それはスズケンさんから誘ったんですか?
スズケン: もともと「行ってもいいかなー」って言ってはいたんですけど、来れる大会が少なかったですよね。 観客として入れるのがあまりなくて。 でその時は会場が紅鶴だし、パグよしさんと組むし。相方が相方なんでいけるんちゃうかなーって。 それで「もし時間あったら来てよ」って言うたんです。
あのころ: あの時面白かったですもんねー。
スズケン: あの時もあのころさんには叱咤激励を頂きまして。「お前の大喜利を俺は認めへんからな」って(笑)
あのころ: 全然覚えてないです。そんなこと言ってました?(笑)
スズケン: ちょいちょいあのころさん出てきますよね、俺の話の要所要所で(笑) あのころさんの名言はいっぱい残ってますよ(笑)
あのころ: いや覚えてないですけど(笑)
スズケン: 僕、出来なかったことをひとつずつ克服してきたんですけど。 克服出来た中で一番印象に残ってるのが、大喜利の強い人ってみんな楽しそうに大喜利してるでしょ?
あのころ: ああ、それは絶対そうですね。
スズケン: 多分、自分の回答で笑てはるんやと思うんですけど、みんなめっちゃ楽しそうなんですよね。 あのタッグフェスの時は自分でも初めてっていうくらい楽しくできたんですよ。 もう別に自分がダメでも相方が相方だし、任せられる人だし。実績もね。 今はもういないですけど。ニュージーランドだかどこかへ行ってはりますけど。
あのころ: 生きてんのか死んでるのかもわからないですけどね(笑)
スズケン: いやもう、是非行きて帰ってきて欲しいですけどね(笑) だからその時に、「こうやったらどうなる」とか考えてるうちに楽しなってきて。 多分ずっと笑ってたと思うんですよ。 それをあのころさんに見透かされてたんですよね。
あのころ: あ、そうでした?
スズケン: 「お前誘い笑いみたいなんすんな」って(笑)
あのころ: ちゃんと見てたんですね(笑) でもそうやって楽しくて笑ってる人ばかりじゃないですもんね。 技術的に笑い顔を使ってる人もいっぱいいますよ。 あれ笑顔でやってても内心は冷静な人多いですからね。
スズケン: ああ、そうなんや。 やっぱり俺の中では「強い人は楽しそうにやってる」っていうイメージがすっごいあって。 でもあのころさんに言われてからは「楽しくやるのと技術として笑顔でやるのとは違うんやな」って。 そこでまた一つ階段を上がれるんです。あのころさんのおかげでね。
あのころ: スズケンさんは化けた人なので聞きますけど、 その前後で周りの接する態度が変わったなんて経験をしてるんじゃないかと。
スズケン: いや、そんな態度が変わった人おるかなぁー?ひらたいですかねぇー?(笑)
あのころ: あはははは(笑)何その用意してたみたいなやつ。
スズケン: いやでも僕自身はそんな感じは受けてないですけど。
あのころ: 僕はでもちょっと変わりましたね。
スズケン: ああ、そうですか。
あのころ: 僕はよく頭殴ってましたからね、悪い意味でやってたわけじゃないですけど。 それが活きる人だと思ってやってはいたんですけど、もう最近はやりづらいです。
スズケン: あはははは(笑)是非やってくださいよ。
あのころ: なんかもう手の届くところにいるスズケンじゃなくなっちゃったなーっていう。
スズケン: 全然、もう全然そんなことないですよ(笑) 誰やったかな「スズケンってもうそんなんやったらアカン人になったんちゃうん」って言われて。 いやもう全然やってくださいよ。
あのころ: 今話した感じでは全然そんなふうに思ってないということが判りましたけども。 まあ、そういう時って大概周りが変わってるんですよね。 本当に信頼できる人はその前後で態度は変わってない人ですけどね。
スズケン: 全然変わってないですよ。今だにダメだされますからね、ホンマありがたい話で。
あのころ: やっぱりいじってもらえるようになったのが大きいですよね。
スズケン: それは大きいですね。 一応、いてもいいんだなっていうのを与えてもらったっていう気がするんですよね。 大喜利出来なくても、それだけでそこにいることができましたから。
あのころ: すっごい便利な人なんじゃないですか(笑)芸能界で言う出川さん、じゃないですけど。 ここをいじっておけば確実に笑いが取れるというか、場が盛り上がるというのが保証されてる人ではあるんで。
スズケン: あのね、そんな時にでも俺は「もっとええ返しがあったちゃうか」って思うんですよ。 いじられる人って多分そうやと思いますよ。帰ってから反省したりしましたね。
あのころ: 反省してるんだ(笑) 今までもそういういじられるタイプだったんですか?自分で回すんではなく?
スズケン: そう、思ってたんですよ、回すタイプだと思ってたんですけど。
あのころ: そうでしょうね。
スズケン: あのね、一番身近な人から言われたんですけど。 奥さんが「いや、何ら変わりない。どこへ行ってもあなたこんなやったで」って。 大喜利の人たちと遊ぶときも学生時代の友達とバーベキューするようなときも、 「おいスズケン、ジュース買うてこい」「なんで行かなあかんねん」って 扱いがあんまり変われへんと。
あのころ: じゃあ奥さんから見れば特別変わったとも思ってわれてないんですね。
スズケン: あんまり思ってないみたいですね、うん。 「良かったね」はよく言われますけどね、「大喜利やってて良かったね」って。 やめたい時期も知ってたんで。
あのころ: やめたい時期があったんですね。
スズケン: なんぼでもありますよ。山ほどありますよ。 あのね、もう〆るみたいなこと言いますけど、絶対にやめへん方がいいです。
あのころ: あはははは(笑)そうですか。
スズケン: もし今大喜利に悩んでる人がいるなら、休憩はいいです。でも、やめへん方がいいです。
あのころ: 前回のオオギリレーダーで、冬の鬼さんに「大喜利が面白くなりたいとしたら何をしたらいいですか?」 って聞いてめちゃめちゃ名言が帰ってきましたけど。スズケンさん的には?
スズケン: 俺はとりあえず「やめるな」と。やめたらそこで終わりですから。 やめようとした人間が言ってるんで。 『崩解 生』で勝つまではずっと思ってましたから。あの日が最後のつもりで行ったんです。
あのころ: あはははは(笑)背水の陣を敷いて。
スズケン: 自分の中でちゃんとけじめをつけようと思って。 第1回の崩解 生で優勝させてもらったんですけど、あの時に嫁さんだけには言ってあったんですが、 「俺これ取られへんかったらもうやめると思う」って。
あのころ: すごい覚悟だったんですね(笑)
スズケン: それくらいハッパかけないと、すぐくじけるアカン人間なんで。
あのころ: それ優勝するコンビが出てくる前に見せられるエピソードのやつですよね(笑)
スズケン: ご存じの方も多いと思うけど崩解 生って回答だけで審査されるルールじゃないですか。
あのころ: 不得意だったはずのね。
スズケン: めっちゃ不得意ですよ。でも、キャラ乗せてるって言われるのがその当時はコンプレックスというか。 俺なりに一生懸命考えて出してるのに、なんかオッサンが出した回答やからウケてるのかなって。 で、おれあの時に初めて予選に通ったんです。で、「よかった、もうやめんでええわ」って思って。 で決勝で「絶対取るぞ」と、「このチャンス逃さへんぞ」と。 決勝はホンマ楽しかったですけど。初めて決勝に進めた喜びもあって。
あのころ: 震えました?
スズケン: そら震えましたよ。ほら大喜利やっててね、泣けるってすごいじゃないですか。 まあ泣いてはないですけど、もしそっとしておいてくれるなら多分俺黙ってボロボロ泣いてましたよ。
あのころ: 今まで悔し泣きばっかりだったのにね。
スズケン: そうですよ。帰りの電車でね、大阪の田舎なんで乗ってる時間が長いんですよ。
あのころ: 帰りの電車ってすごく考える時間ですもんね。 やっぱりその回答だけで評価されたというのはスズケンさんにとって大きかったですね。
スズケン: それはやっぱり自信になりましたね。 いろいろ他にもありますけどね、僕のターニングポイントになった出来事は。 お笑い頭脳バトルのトリオマッチだとか、ソバ2さんからいろんなええアドバイスをもらったこととか。 大喜利の人ってみんな熱いじゃないですか。 聞けば応えてくれるから、悩んでいるのならいっぱい聞いて吸収して、とにかく「やめんな」と、 僕は言いたいです。
あのころ: それだけ周りからいろいろ言ってもらえるってのは貴重なことですよね。 お前どうでもいいわ、来なくてもいいわって人には言わないですもんね。
スズケン: そうですよ、ホンマありがたいです。いろんな大喜利の人に感謝しています。
あのころ: そういう経験をしているから、自分も言ってあげたいという気持ちもありますよね。
スズケン: あります、僕しか言われへんこともあるんかなとか思いますねやっぱり。
あのころ: もう一時間過ぎちゃったんで次の項目に行きましょうか(笑)

というわけで後編に続きます。。。